音にこだわるジャズ・アルバム
ー 長澤 祥 ー
カルテット・クインテット
▼「アフター・アワー」
トム・ブリガンディ(b)&ザ・レイトナイト・ニューヨーク・バンド(ベース・オン・トップSJFP200)輸入盤 2002年録音
アフター・アワーに展開するジャム・セッションを思わせるようなリラックスした演奏と生々しい音が特長です。テナー・サックスとトランペットの2管編成ですが、ワンホーンによる「I Fall In Love Too Easily」では床を這ってくるベースの胴鳴りに絡んで聴こえるブリガンディのハミングもリアルで、エリック・アレキサンダーのテナー・サックスは最低音Bフラットで部屋のテーブルが共鳴するほどでした。
▼「ザ・クラッシク・トリオ・ミーッ・E.アレキサンダー」
(シャープ・ナインCD1023‐2)輸入盤 2002年録音
エリックのテナー・サックスと一番マッチするピアノといえばデヴィド・ヘイゼルタインです。彼がリーダーのザ・クラッシク・トリオをバックに従えたカルテット演奏は最も好きなアルバムのひとつです。実に朗々とテナー・サックスが中低音を基調に鳴りわたります。エリック節も随所に現れますがサポートするピアノとの絡みがスリリングで連続する8小節のアドリブもスピード感に溢れています。
▼「785 マディソン・アヴェニュ」
マッド・ベーレンゼン(p)・トリオ フィーチャリング・エリック・アレキサンダー(ts) (ミュージック・メッカ3054-2) 輸入盤 2001年録音
北欧のピアノ・トリオと組んだエリック・アレキサンダーのコペンハーゲン録音で、澄んだ空間にゆったりと自然に鳴る演奏に加え実に気持ちのいい音です。北欧の録音エンジニアのセンスが音に反映されており芳醇なテイストを感じます。エリック・アレキサンダーのテナー・サックスは豊かな響きの中にもリードの震えが聴きとれる繊細な録音で、前2作のアメリカ録音と対象的な音の仕上がりです。
▼「スモーク・ゲット・イン・ユア・アイズ」
エディ・ヒギンズ(p)・カルテット フィーチャリング・スコット・ハミルトン(ts) (ヴィーナスTKCV35100) 国内盤 2001年録音
テナー・サックスを目の前で聴いたことがありますか。そんな音でビックリするような録音です。マウスピースのリードの震えを舌でコントロールするタンギングというテクニックが音で聴こえます。ノイズのように聴こえますが実はリードを操る音なのです。
音が聴衆のほうに向かって出る楽器、サックスやトランペットでは演奏者は自分の実音が聴けません。この録音を聴いて一番驚いたのはスコット・ハミルトン自身でした。
▼「ヘビー・ヒッターズ」
エリック・アレキサンダー(ts) カルテット (アルファ ALCB3926)国内盤 1997年録音
ブルーノートで名盤を残したエンジニア、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音です。楽器に秘められた音のエネルギーとかたちをどれだけ正確に記録できるか、楽器の骨格をどれだけリアルに再現できるか、これが彼の信念です。ピアノ・トリオとテナー・サックスが演奏者の気迫とともに鳴り渡る圧倒的な出来栄えのアルバムです。ナマ演奏の迫力とは一味ちがうレコーディング独自の音の世界です。
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