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音にこだわるジャズ・アルバム

ー 長澤 祥 ー  

ピアノ・トリオ編

「ピアノ・トリオ」
「処女航海」(Maiden Voyage)Eighty-Eight VRCL-18831
 オースチン・ペラルタのピアノトリオだが、ここではビリー・キルソンの爆発的ドラム、特にシンバルから飛び散る金属の匂いが部屋に散る。ロン・カーターのベースも重低音までのびており床を這って聴こえる。ジャズオーディオのファンも納得する出来栄えでジャズ演奏のエネルギーに溢れている。

 2006年8月9日更新


「NIGHT SONG」
「NIGHT SONG」SAVANT SCD2067(輸入盤)
 マイク・ルドンのピアノトリオをジャズ録音の神様ルディ・ヴァン・ゲルダー録った。ピアノの骨格も豊かに響く。ジョー・ファンスワースの的確なドラミングもみごと。ロン・カーターのベースを録音するのはR・V・ゲルダーしかいなと言われるほどベースの胴鳴りや弦の弾み感まで正確に捕らえている。

 2006年8月9日更新


「ワン・ホーン・カルテット」
「It's All In The Game」HighNote HCD7148(輸入盤)
 いまテナー・サックスを吹いてはナンバーワンと人気のあるエリック・アレキサンダーの最新録音。オクターヴ・キィを多用したスピード感溢れる演奏で技の見事さに聴き惚れる。ピアノ伴奏のハロルド・メイバーン、ベースのナット・リ−ヴス。ドラムスのジョー・ファンスワースのサポートの音像も明瞭で、これもルディ・ヴァン・ゲルダー録音。

 2006年8月9日更新


「ESTATE」
「ESTATE」VIDEOARTS VACM-1282
 新進テナー・サックス吹きのグラント・スチュワートが図太い低音中心に吹きまくる。エリック・アレキサンダーに継ぐ人気のテナー吹きの最新録音。こちらはホーンの開口部をたっぷり響かせる演奏で音の力強さには圧倒される。曲目に選び方がよくアルバムタイトルのエスターテは何度も聴いてしまう出来栄え。

 2006年8月9日更新


「ベース・トリオ」
「THE NAME OF A WOMAN」P.J.L MTCJ-6508/09
 異色のベース弾きデヴィッド・フリーゼンをフィーチャーしたピアノトリオだが内容はベースの技をたっぷりと聴かせてくれる。ランディ・ポーターのピアノも負けず劣らず冴えた技を展開する。2枚組だがスタンダードとオリジナルの組み合わせもよく曲「AUDREY」はジャズオーディオ・ファンが痺れる音。

 2006年8月9日更新


「エイト・リトル・フィート」
ランディ・ポーター・トリオ(ヘビー・ウッドHW7889J)輸入盤 2000年録音
 レコードにはナマ演奏とは違う音の演出があり、それがレコード独自の音楽世界を創っているのは常識となりました。しかし、ナマ演奏の音をそのままにCDで仕上げたいという録音エンジニアの願望も消えることはありません。これほどピアノの響きが本物に近いCDも滅多にないのです。偶然の出来ということもあるわけで、目の前でピアノ・トリオが演奏しているようだという文章を本当に使ってみたい出来栄えです。


「パラボラ」
ピーター・マーチン・トリオ(アルファ・ジャズALCB3916)国内盤 1997年録音
 オーディオ・システムを進化させる度に、音がどれだけ良くなったかを確かめる音源としてのCDを持っていることが大切です。このアルバムは底知れぬ音質を秘めており、再生装置の進化とともに楽器の質感やミュージシァンの気配と音場の空間がいくらでも聴こえてくるのです。音の底なし沼CDと言ってもいいでしょう。今でもこれを越えるピアノ・トリオの録音はありません。録音はジム・アンダーソンです。


「過ぎし夏の想いで」
ビル・チャーラップ・トリオ(ヴィーナスTKCV35304)国内盤 2002年録音
 彼のアルバムでは「ブルース・イン・ザ・ナイト」に人気が集まっていますが、音の良さではこちらです。録音スタジオの空間がみごとに再現されています。楽器のごつごつ感は多少「ブルース・…」には負けますが、ドラムスではシンバルの鮮やかな響き感や誇張のないベースの鳴りかた、ピアノの自然な余韻感など総合的に優れているのです。音に演出があったほうが好きというのなら「ブルース・…」を聴いて下さい。


「ザ・クラシック・トリオ」
デビッド・ヘイゼルタイン・トリオ(シャープ・ナイン1005-2)輸入盤 1996年録音
 ジャズ録音の神様とも呼ばれているルイ・ヴァン・ゲルダーが自分のスタジオで仕上げたアルバムで重厚なピアノ・トリオのサウンドが展開します。左右のステレオ感より前後のステレオ感を重視する録音姿勢がブルーノート・レーベルの時代から一貫しています。2000年録音「ザ・クラシック・トリオ Vol.2」も同じメンバーで発売となっていますが、音は断然こちらが良いのです。国内DIW盤もあります。


「ザ・ロイ・へィンズ・トリオ」
(インパルス MVCI24019)国内盤 1999年録音
 スタジオ録音とライブ録音で構成されたアルバムです。音の出来栄えを肴に例えれば前半は上品な干物の味であり後半は鮮度抜群の刺身の味です。ライブ・レコーディングは条件から録音が難しいとされていますが、どうしてどうして演奏の迫力は勿論、音も跳ね上がっています。尻尾がまだ踊っている鯛の刺身とでも言っていいでしょう。演奏者の汗と聴衆の熱気が渾然一体となった会場の雰囲気がリアルに伝わってきます。


「ベリー・ベスト」
コンピレーション・アルバム(ヴィーナスTKCV35309)国内盤 1997-2000年録音
 ピアノ・トリオ制作本舗と言えばヴィーナス・レコードです。この数年の間にリリースした多くのピアノ・トリオのアルバムから演奏と音質に優れた11枚を選び、代表作1曲づつを集めたヴェリー・ベスト盤です。楽器の輪郭や質感、音力などステージ前のかぶりつきに座って聴いているような迫力で、全身音まみれになってしまいます。タムの皮を擦るブラシ音やシンバルを打つステイック音などドラミングは他では聴けません。


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