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―オーディオと音楽・タイムドメイン―
「Stereo Sound No.73冬号」(1985年)掲載カタログより

『フォルテが終わり、ソロが始まる......その一瞬の音の空間の透明さといったら』

●トレバー・ピノックの指揮するウ゛ィバルディの『四季』を聴いてみました。『四季』の楽譜にはソネットが添えられています。その『冬』の 冒頭にはAggiacciacciato tr-emar tra neri algenti;(冷たい冬にがたがたふるえ)とあります。凍てつくような寒さが表現され、つぎに「はげしい風のふくなかを」というヴァイオリン・ソロのはげしい表現があり、さらに「あんまり寒くて歯ががたがたふるえる」シーンでは低音を抜いて、中高音のヴィオラ以上の音でアンサンブルし、冬のピーンとはったさむさを表現しています。ヴィオラの音の鋭さ、音の線をはっきりと聴かせ、その上で細かく刻むソロ・ヴァイオリンの効果をはっきりと感じさせています。これだけの効果を完全に再生することのできるパワーアンプはなかった、と言って良いでしょう。

●グランインテグラは従来のあらゆるパワーアンプに共通して存在していた、スピーカーのfo付近で生ずるスピーカー駆動電流の位相のずれの影響を、ダブル・トランス・ドライブ方式によって、はじめて完全に取りのぞきましたから、この硬くしかも緊張度をもって演奏されているヴィオラの音をたかい純度をもって再現し、緊密なアンサンブルを聴かせてくれます。

●『春の』第二楽章のメロディーを奏でるヴァイオリン・ソロは「眠る羊飼い」、中低音のヴァイオリンの2つのパートは「木の葉のささやき」、バスを受け持つヴィオラは「吠える犬を」をそれぞれ描写します。チェロに比べて音量がなく、ヴァイオリンのようなはなやかさもないヴィオラが音楽の和声のうえで一番大切なバスを受け持って、しかもタッターとアタックをつけて使われるのですから、その再生はむずかしく従来の最高級アンプでもバスの音自体は聞こえますが「吠える犬」の鋭さがどうしても足りません。グランインテグラによりそのそのヴィオラは初めてその音程とともに一つの鋭さ、固さをもって再現されます。それと平行して微妙なおとの揺れが「木の葉のささやき」をあらわし、メロディーを引き立てるのです。●グランインテグラには位相の乱れが取り除かれていますから、その再生音は空間を広げ、その空間にみなぎる透明感のなかから必要な音がきちっと輪郭をもって現れてきて、輪郭の大きさが自在に変幻します。フォルテが終わり、次にソロが入ります。その一瞬の音の空間の透明さといったら....これによって、いままで聴こえなかった音が聴こえるようになったのは当然のことです。

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