TIMEDOMAIN
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―オーディオと音楽・タイムドメイン―
「Stereo Sound No.72夏号」(1984年)掲載カタログより

『4本のトランペットのかすかな差がつくりだすひろがりを聴いてみませんか?』

●リヒアルト・シュトラウスの交響詩、『ツァラトゥストラかく語りき』(ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー・オーケストラ)にひそむかぞえきれない魅力を、わたしたちに発見させてくれるのも、グランセプターです。

●これまでは、楽器だけをたくさんならべて聴いているような感じだったドイツ・グラモフォンのレコーディング・テクニックが変わって、空間のなかに音楽がひろがっている雰囲気がよくわかります。

●はじめに有名なオルガンのペダルと、コントラバスのトレモロ、それから、大太鼓の、グラン・カッサ、それからコントラファゴットのトレモロがいちばん低い「C」の音で重なっています。オンキョーのエンジニアは、スピーカーについていままで言われてきた「ひずみ」以上に、重大な「時間ひずみ」を発見し、それを丹念に取り除いてしまった結果、その複雑で微妙な重なりがグランセプターをとおしてはっきりと聴こえてきます。

●ここではまだ音楽がはじまってはいません。これはひとつの状況設定というように考えることができるでしょう。ベートーヴェンやシューベルトであれば、音が鳴ったときから音楽なのですけれども、リヒアルト・シュトラウスにおいては、音が鳴ったときが音楽のはじまりなのではなくて、むしろひとつの雰囲気づくりのはじまりなのです。絵画的というか、劇的というか、これはリヒアルト・シュトラウスの得意の技なのですが、グランセプターの表現する雰囲気といったら、これはもう他のどんなスピーカーも真似のできないものなのです。そのなかからトランペットの、ド、ソ、ド、という三つの音が、ファンファーレのように鳴りわたり、つぎに、ティンパニーの、ド、ソ、ド、ソ、という印象的な連打が、そしてトゥッティーが.....それが3回くりかえされていきます。

●1回ごとに、音量指定がちがいます。最初はピアノ(やわらかく、弱く、低く)、そのつぎがメゾピアノ(やや弱く)、3回めがフォルテ(強く、大きく)。それは、ただ音量のことだけをいっているのではありません。

●ド、ソ、ド、という音を繰り返すトランペットは「4本」と指定されていますが、カラヤンのことですからひょっとしたら8本ぐらい使っているかもしれません。トランペットにかぎりませんけれども、ホルンでも、フルートでも、おなじ音を複数で吹くと、その昔が1本のときよりかなりひろがって、ふくらんで聴こえます。それは人間が吹くものですから微妙な差があり、その差によってひろがりが自然にでてきます。

●4本のトランペットに「ピアノ」→「メゾフォルテ」→「フォルテ」という指定をシュトラウスが与えたのは、ただ音量を大きくしてほしいからではなく、横のひろがりを、全体の空間のひろがりをつくつていってほしいからなのです。グランセプターは、音のこのひろがりの再現をとおして、わたしたちをいつのまにかシュトラウスの世界にからめとってしまいます。

●グランセプターは眼眩めくようなオーケストレーションの豪華と絢欄のなかに表現される世紀末の憂鬱を追体験するためのタイム・マシーンなのではないでしょうか?

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