●定位は、左右の音量差で決まるというのが、これまでのスピーカーについての考え方でした。
●しかし、私たちは、それだけでは十分ではない、と考えました。時間もピシッと合わさなければならない、と。
●ステレオアンプの片チャンネルの音量を下げると、時間を合わせていない、ふつうのスピーカーならば、定位は大きく動いてしまうわけですが、このスピーカーのように時間をピシッと合わせておけば、針で指し示すように精密な定位が得られ、アンプのチャンネルバランスを少しぐらい動かしても、その定位は動きません。
●このように精密な定位が得られたことで、音楽再生は新しい次元に突入したと言えます。
●たとえばプラームスの交響曲弟4番のはじまりのところで、ヴァイオリンが主旋律を奏でます。それを二部に分かれたヴィオラと、チェロ、コントラバスが支えて、ブラームスの特徴となっている「いぶし銀」のような中低音の重厚な響きを作り出しています。それにこだまするように、オーボエを意識的に抜いて柔らかな感じをねらった管が影法師のようにふわーっ、ふわーっとくっついて、流れてきます。
●演奏会場で聴いていると、それがはんとうにこだまのように聴こえてきます。 これは、いままでのスピーカーの表現力をはるかに越えたものでした。
●たとえば、ある現代最高級のスピーカーは、この弦と管の関係を逆転させてしまいます。ブラームスが影法師のように漂わせたかったはずの木管がキラキラと輝いてしまい、いぶし銀のように鳴らされる弦のまえに張り出して、管が弦を支えるのではなく弦が管の伴奏をしているように、聴こえます。
●時間軸をぴったり合わせたこのスピーカーの出現はこの「いぶし銀」の弦、それにこだまするように寄り添う木管の「影法師」のような漂い、そのなかにこめられたブラームスのロマンティシズム、そのオーディオ的再現を初めて可能にしたのです。
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