ステレオ録音された音は、わざと録音あるいは加工されたもの以外、すべての収録音は左右で何らかの関係を持ち、しかるべき空間から聞こえるはずです。ですから、理論的にはスピーカーの位置から聞こえるということはありません。
ところが従来システムでは、スピーカーの位置から聞こえてしまうことがよくあります。これは左なら左、右なら右固有の成分がそれぞれのスピーカーから出ているからです。
この原因はひずみにあります。
アンプやスピーカーでのひずみは左右関係なく生じますから、個々のスピーカーから出る固有の音の成分となり、それがわれわれにそれぞれのスピーカーが鳴っていると感じさせるのです。もちろん、このひずみが多いほど左右のスピーカーが鳴っていることがはっきりわかるのです。
逆にひずみがすくなければスピーカーが鳴っていると気づきません。タイムドメインのシステムはひずみが少なく時間や微小音まで正確に再生するので、音はすべて収録された空間から聞こえます。よってスピーカーの位置からは聞こえないということになります。
砂浜に2本のマイクをおいて録音した波の音(ほとんどの波の音がそのように録られているはずであり、これは自然なステレオ録音になります)が従来システムではスピーカーから音が聞こえますし、タイムドメインのシステムではスピーカーとスピーカーの間から聞こえます。
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