既存のオーディオシステムでは聴き得ない、100%ピュアでリアルな音を再現する新システムが、いま多くの人の共感を獲得。
「タイムドメイン」とは、従来のオーディオシステムの考え方をくつがえし、音の形を崩さずに音源からの音を100%ありのままに再現することに重点を置いた、全く新しい音の再生理論。タイムドメインの由井啓之社長が大手音響メーカーに勤務していた頃、「いい音」を追求し続けた結果、思いついた画期的なアイデアだ。このタイムドメイン理論を元に、コンピュータをフル活用して開発されたオーディオスピーカーシステムは、瞬く間に世界の注目を集め、数々の賞を獲得した。
ところが、由井社長はその後、会社から「研究所閉鎖」を言い渡される。「どうしようかと途方に暮れていたその日の夕方、アスキーの当時の社長が研究所へやって来ました。そしてスピーカーから流れる音にジッと聴き入り、なんと研究の支援を申し出てくださったんです。」これが脱サラのきっかけとなる。けれども約1年後にはアスキーの敬啓にも変革の波が押し寄せ、由井社長は99年3月、本格的に独立することとなった。
土壇場からのひらめき
いま、タイムドメインの代表となる商品は、タイムドメイン理論に基づき開発されたパイプ製のオーディオシステム「Yoshii9」だ。
「理論はあるものの具体的な商品の愛では何もない。資金も底をつき、スタッフも全員辞めてしまった。1人になって追い詰められ、過労と高熱で寝込んでいる時、パッとひらめいた」のが、この商品だったと言う。
30万円という低価格を実現した「Yoshii9」は、口コミで販路を広げ、これまでに700セットを売り上げた。その後、開発したタマゴ型の小型タイムドメインスピーカー「TIMEDOMAIN mini」も、好評な売れ行きだ。
感動から得られた支援
「山あり谷ありの中で、事業をここまで支えてくれたもの、それは"感動"です」と由井社長は言う。最初に支援を申し出たアスキーの社長、そして先の見通しも担保も何もないときに「音がすばらしいから」と3500万円を融資してくれた地元の信用金庫、製造に携わる企業、タイムドメインのスタッフたち、また商品を購入しようとするお客さんも、みんな音を聞いて感動し、集まってきた人ばかりだ。
「不安や責任はもちろん大きい。でも、自分が思うままに研究できるという点はサラリーマン時代にはなかった利点ですね」。求め続けてきた音、そしてその音に共感する仲間に囲まれて、音楽に耳を傾ける由井社長の表情は実に心地よさそうだ。」
土壇場でのヒラメキ |
新しいアイデアや商品の発送は、一つのことに没頭して失敗してもとことん挑戦し、すべてやり尽くして「いよいよダメだな」と諦めた時にパッとひらめく。ひらめきとはそういうものです。「Yoshii9」の発想も、あらゆる手を尽くし、土壇場まで追い詰められた時に思いついたものでした。いま思えば、ひらめきの条件が揃っていたんですね。モノを一からクリエイトするには、しぶとく追求し続けることが大切です。
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