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 「Yomiっこ創刊号」

なら人

由井啓之さん

心癒す音を奈良から世界へ


 すごいスピーカーだとは聞いていたが、実際のサウンドに思わず息をのんだ。のどの故障を乗り越えて再復帰したという元女性歌手のアカペラ。息遣いを感じ、音が体の奥深くしみ込む。
 プレーヤーは、携帯用のCDウォークマン。ジャズライブのCDは、生演奏しているのかと感じるほど、弦のはじく音まで鮮明だ。そして20年前の録音だという「お水取り」の声明(しょうみょう)テープ。古いカセットテープレコーダーとそのスピーカーをつないだだけで、お水取りの場にいるような臨場感に包まれた。まさにyoshiiマジック。「いい歌手や音楽家がきちんと歌い、演奏していれば、その音を忠実に再現することで、必ず深く感動する音が出せます」と由井さんは話す。
 細長い円筒形のスピーカー2本に、手のひらサイズの小さなアンプ。これにどんな秘密があるのか。今までの音響は周波数を忠実に表す理論だったが、空気の圧力の変化を忠実に再現するというのがタイムドメイン理論。それを形にした円筒形の"yoshii9"を一昨年7月に、パソコンにもつなげられる携帯に便利な"タイムドメインmini"を5月に発売した。口コミだけですでに600人が購入。うち7割は音楽に興味のなかった人だ。特に女性が多い。音楽家自身も、自分の声や音に驚き涙すると言う。
 20年前、自身の入院生活で心癒してくれたのが音楽であり、そこから「もっといい音」への研究が始まった。今の理論がひらめき、オンキョーの研究員として、スピーカーを製作発表、世界でグランプリを獲った。しかし研究を続けられず、結局会社は辞め、周囲の援助を受けて故郷の奈良で独立した。60歳だった。資金面ではずいぶん苦労、銀行の役員に試聴してもらい、"音"を担保に融資を受けたこともある。
 結果、7千万円のスピーカーを持つビルゲイツにも自分のよりすぐれていると称賛され、パリやベルリンのショーも大成功、問い合わせが次いでいる。もはや奈良でなく世界のyoshii。ベンチャー企業としても注目を浴びている。
 価格も商品価値からすると驚くほど安価。「ほしいなあと思う人がだれでも手の届く範囲にしたい」との由井さんの努力の結果だ。
 頭にあるのは「音の郷」構想。「地域の人をはじめ、音や音楽、心を大切に思う人たちが集う場をこの高山に作りたい。もうかったら音楽ホールを建てたいです」。本物を信じて追い続けた夢の実現。心を癒す音が、奈良から世界へ発信される。