TIMEDOMAIN
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国際グラフ2001年9月号

人と企業

■(株)タイムドメイン

対談
 
代表取締役社長由井 啓之

ゲ ス ト倉石 功(俳優)

音源100%再生可能なスピーカーを開発

心の領域に届くオーディオ作り

倉石 このパイプのような物がスピーカーですか。
由井 昨年12月に量産発売を開始した『Yoshii9』です。パイプ型を採用することでフレームの振動を抑えるように設計してあります。このスピーカーをヨーロッパへ紹介しに訪れた際、イギリスのヒースロー空港の税関でバズーカ砲と間違えられて別室で質問を受けることになったのですが、最終的には1時間にわたるコンサートになり「あなたはこれを誇りにすべきだ。必ず成功する」と税関長からも絶賛されました。(笑)。
倉石 そのエピソードもこの音を聴けば納得です。すごくリアルな音と言いますか、まるでコンサート会場にいるような臨場感ですね。
由井 発売当初、ご自身が演奏されるコンサートの様子をこのスピーカーでお聴きになったベースプレーヤーの方がわざわざ当社までお越しになりお買い求め下さったことがありました。「今までどのスピーカーもベースの音はボンボンとしか鳴らなかったが、このスピーカーで聴くとブンブンと鳴る。これがべースの本当の音だ」と。その後、評判は口コミで広がり半年で400台以上を売り上げるまでになりましたが、そのうち3割のお客様は音楽家の方達で皆さん同様に音の良さに満足されており、プロの方に認められたことで一層自信が付きましたね。
倉石 一体何が違うのでしょう。
由井 根本的な理論が違うのです。従来は音を周波数成分で捉え、波形が潰れてもその成分を元に戻せば正しく再生できると思われていたのですが、砂で作ったお城が崩れるのと同じように1度崩れたり消えてしまった音を元に戻すのは不可能なわけです。そこで“音は空気の圧力が時間と共に変化し、それが耳に認識される”という原理に着目し、音の形を崩さずに忠実に再生するスピーカーの開発に着手することになりました。その際、通常のスピーカーに装備されているウーファーやスコーカー、ツィーターなどのユニットはどんなに集めても元の音にはならないことから、振動板も小さい物を選んでコンパクトにまとめるなど従来とは異なるスピーカーが完成しました。
倉石 その理論を見付けるきっかけになったこととは。
由井 私はもともとオーディオメーカーのオンキヨーで音の研究をしていたのですが、従来の方法では実際の音源からの音を100%引き出していないのではないかと常々疑問に思っていたのです。そこで音を忠実に再生するため理論を改めて見直した結果、先程お話しました音の形を正しく再生する“タイムドメイン理論”にたどり着いたのです。その理論に基づいて開発した最初の製品『GS-1』(240万円)は1983年にオンキヨーから発売されてヨーロッパのハイエンドショウで金賞を受賞、世界的にも理論の正しさが実証されました。ところがその後、世の中が不況になったこともあり利益に繋がるかどうか分からない研究に対して会社からストップが掛かりましてね。そのままだと窓際族で終わっていたところでしたが、研究室明け渡しの夜に当時のアスキー社長の西和彦氏が来られてスポンサーになって下さったお陰で研究を続けることができ、こうして独立の夢も実現しました。
倉石 長年、専門分野で培われた知識を総導入し誕生した『Yoshii9』はどちらで購入できるのですか。
由井 当社まで直接申し込んで頂ければ宅配便でお届けしますし、各地に試聴場所を設けていますので直に音の良さに触れて頂ければと思います。また、今年5月からこの理論に基づいて作ったタイムドメインスピーカー『TIMEDOMAIN mini』を1万8,000円で発売中で、こちらもぜひお試しいただきたいと思います。コンパクトですから場所を取らずに袋に入れて持ち歩くこともでき、どんな機器とも簡単に接続てきる専用アンプを内蔵していますのでテレビやラジオ、パソコンに繋ぐことも可能です。
倉石 まさしく“音の世界の革命”ですね。夢は膨らむ一方でしょう。
由井 来年あたり『Yoshii9』を野外でも使えるように、もっと頑丈で扱いやすいものに改良したいと考えています。そしてこれは私の夢でもあるのですが、20年前に作った『GS-1』を新たに作り直したいと考えています。このスピーカーは大阪状ホールなどの大きな会場での使用にも耐え得るパワーがあるのが特長で、活躍の幅も更に広がると期待しています。ただ、大変な技術と資金が要りますから2〜3年後を目標に実現したいですね。
倉石 最後に今後の抱負もお願いします。
由井 今まで音の感動と無縁だった60歳以上の方や、これから頭脳や心が発達していく子供さんにこのスピーカーから流れる音をぜひ聴いてもらいたいと思っています。汚い音や環境がきにならない心に育つよりも、いい音を敏感に察知できる豊かな感受性を育んでほしいですからね。先日、重症の身障者の方に聴いて頂く機会があったのですが、涙を流して喜んで下さいまして私自身も大きな喜びとなりました。
倉石 社長の思いが込められたスピーカーを通して、多くの方の心に上質の音が鳴り響きますように。